2024年10月に自社サイトをリニューアルしてから、約1年少しが経ちました。結果として、アクセス数は2倍以上、問い合わせ数は2.5倍になりました。
こうした数字を具体的に公開している制作会社は、実はあまり多くありません。
私たちは普段、クライアントに「数字で効果測定しましょう」「KPIを設定しましょう」とお伝えしています。にもかかわらず、自分たちのサイトリニューアルでどんな成果が出たのかは語らない。冷静に考えると、これはフェアではないと思ってます。
クライアントには成果を求めるのに、自分たちの結果は見せない。うまくいったのか、何が効いたのか。そこをオープンにしないまま「成果の出るサイトを作ります」と言うのは、少し無責任ではないか。そんな思いがありました。
弊社はデザイン会社ですが、代表の私自身がデザイナーであると同時に、数字と戦略設計に異常なほどこだわる人間です。運営しているWebデザインギャラリーサイト「MUUUUU.ORG」は月間30〜40万PV、Xのフォロワーは2.4万人、YouTubeチャンネル登録は1.3万人。クライアントワークだけでなく、自社メディアでも数字を積み上げてきました。
だからこそ、自社サイトのリニューアルでも数字を出さないのは、自分たちらしくない。今回、包み隠さずお伝えします。何を考え、何を実行し、結果どうなったのか。成果が出た部分も、まだ改善が必要だと感じている部分も含めて。
1.なぜ自社サイトをリニューアルしたのか
これまでの自社サイトは、海外の先進的なデザインのトーンを踏襲した、いわゆる「デザイン会社らしい」実績集サイトでした。ビジュアル的には洗練されていたし、派手なインタラクションで技術力もアピールできていたと思います。
ただ、そこには大きな問題がありました。作ったものを美しいアニメーションでかっこよく陳列しているだけで、何を考えて、どんなプロセスでデザインを生み出すのかが語られていませんでした。実績を陳列しただけでは価値が伝わりません。
美しい成果物は並んでいても、「なぜそのデザインになったのか」「どのような課題を解決しようとしたのか」といった、戦略的な部分が見えない。
弊社の本当の強みは「デザイン力×戦略」です。見た目を整えるだけでなく、徹底的にリサーチし、数字を見ながら設計し、課題を解決するためにデザインする。でも、既存のサイトではその部分がまったく伝わっていませんでした。
クライアントには「デザインと戦略、両方が重要です」とお話ししているのに、自分たちのサイトは「スタイリング優先で、思考が見えない」状態。これは矛盾です。
クライアントに説得力を持ってアドバイスするためには、まず自分たちが実践しなければならない。それが今回のリニューアルの大きな動機でした。

2.リニューアル前に抱えていた4つの問題
2-1.実績だけでは高単価の元請けとして選ばれにくい
既存サイトは典型的な「作品集サイト」でした。美しい実績は並んでいるものの、「この会社に依頼すると何が解決されるのか」が見えない状態でした。
起業したての頃は、実績を並べるという第一歩以上にコンテンツを用意する余裕がありません。それは仕方のないことです。ただ、そのままの状態では、実際のクライアントがゼロベースの新規プロジェクトを依頼するには至りにくい。仕事の内訳が見えないと、不安を感じる方が多いのではないかと思います。高単価の案件であれば尚更です。
元請けとしてプロジェクトを任せてもらうには、デザイン力だけでなく、プロジェクトをどう進行するのかを示す必要があると考えています。どんな体制で、どういうプロセスで、何をどこまでやってくれるのか。そこが見えないと、クライアントは安心して任せにくい。実績の美しさと、発注先として選ばれることは、必ずしも同じではないと思っています。
2-2.「明らかに詳しいプロ」と思わせる情報がなかった
お客様がデザイン会社を検討する際に知りたい情報が不足していました。料金体系、制作フロー、期間、対応範囲など、問い合わせ前に確認したい内容が整理されていなかった。
制作会社として「自分たちは詳しい」「この領域の専門家である」ということは、言葉で説明しても伝わりにくい。自社サイトで実践して見せることで、初めて説得力が生まれると思っています。
何をやっているのか、何にこだわっているのか、どういうプロセスで進めるのか。それを丁寧に言語化して提示することで、「この会社は明らかに詳しい、相談してみよう」という気持ちになってもらえる。逆に言えば、そこが曖昧なままでは、どれだけ実績があっても選ばれにくいのではないかと思います。
2-3.「良く見える部分」が自社の強みと連動していなかった
以前のサイトは、派手でクオリティの高い演出を外注して実装してもらっていました。見た目のインパクトはあったと思います。
ただ、ここに落とし穴がありました。
サイトを見た人は「このサイトいいね」と感じた部分を、その会社の強みだと認識します。当然です。だから、その「良く見える部分」が自社の強みと連動していないと、本来とは違う期待を持たれてしまう。
弊社の場合、華美な演出を見て「こういう派手なサイトを作りたい」という相談が来ていました。もちろん、そういった仕事もお受けできます。
ただ、「できること」と「最も価値を発揮できること」は違います。弊社最大のスキルセットはデザイン力と戦略ディレクション力です。そこが活きるプロジェクトでこそ、弊社に頼む意味がある。サイトからは、その強みが伝わるべきでした。
サイトの印象と、自社が最も価値を発揮できる領域がズレていると、お互いにとって良くない結果になりやすい。弊社に合うお客様に、ちゃんと届くサイトにする必要がありました。
2-4.コンテンツの拡充に弱い設計
ブログやコラムなどで継続的に情報発信し、SEO効果を高めていくための基盤が整っていませんでした。新しいコンテンツを追加しようとしても、拡張しにくい設計になっていた。
デザイン会社のサイトにありがちなのが、見た目の完成度を優先するあまり、運用のしやすさを犠牲にしてしまうパターンです。華美な演出はメンテナンスコストが高くなりやすい。ちょっとした更新も気軽にできない。結果として、更新があまりされないサイトになっていきます。
MUUUUU.ORGで月間30〜40万PVを維持できているのは、継続的なコンテンツ更新があるからです。それなのに、自社サイトではその基本ができていなかった。これは設計ミスだったと思っています。
3.戦略的なリニューアル設計とコンテンツ作り直し
課題が明確になったところで、次は解決策の設計です。今回のリニューアルでは、感覚や思い込みに頼らず、データに基づいたアプローチを徹底しました。
徹底的な市場調査と競合分析
まず、厳選した競合他社15社のサイト構造を詳細に分析しました。各社がどのようなコンテンツでどんな価値を訴求しているのか。サービス紹介の仕方、料金の見せ方、問い合わせまでの導線設計など、細かく調査しています。
この分析から見えてきたのは、業界が両極端に分かれているということでした。
デザインが得意な会社は実績陳列型。美しい作品は並んでいるけれど、それ以上の情報が少ない。一方、デザイン以外を強みにしている会社は売り込みが強いサイト。マーケティング的な訴求が前面に出ていて、デザインの質は二の次になっている。
その中間、つまり「デザインの質が高く、かつ戦略や思考プロセスも丁寧に説明しているサイト」がほとんど存在しない。ここに弊社のポジションがあると考えました。
キーワード戦略:検索ボリュームと顧客ニーズの分析
次に、お客様が実際にどんなキーワードで検索しているのかを調査しました。「デザイン」「ウェブサイト制作」といった基本的なキーワードから、「ブランディング」「課題解決」「戦略設計」まで、幅広く検索ボリュームと競合状況を分析しています。

特に注目したのは、検索ボリュームは少なくても、お客様の具体的な悩みを表すロングテールキーワードです。ここからは、お客様の本当のニーズが見えてきました。

「自分たちが言いたいこと」から「お客様の悩み」へ転換
これまでは「弊社はこんなことができます」「こんな実績があります」という、いわば自己紹介のようなコンテンツでした。
でも、お客様が本当に知りたいのは「自分の悩みを解決してくれるのか」「どのように解決してくれるのか」ということです。
私はよくお客様に、「自分たちの言葉で言いたいことを述べるだけでは、真の意図は伝わらない」とお話ししています。価値を伝えるには、顧客の悩みに焦点を当て、具体的な解決方法を提示することが重要です。
そこで、お客様の課題を体系的に整理しました。「企業イメージを一新したい」「売上に繋がるサイトを作りたい」「ブランド価値を向上させたい」など、様々な悩みを洗い出し、それぞれに対応するコンテンツを設計しています。
100ページ近い新規コンテンツ制作
「100ページも必要なの?」と思われるかもしれません。
でも、これには明確な理由がありました。お客様がデザイン会社を検討する際の疑問や不安をすべて解消するには、相当なボリュームが必要でした。
また、これからのAI検索時代を見越した判断でもありました。ChatGPTやGeminiなどのAI検索ツールは、詳細で専門的なコンテンツを持つサイトを情報源として参照する傾向があります。豊富なコンテンツは、AIが「この分野の信頼できる情報源」として認識するための重要な要素になります。
例えば、「デザイン会社の選び方がわからない」という悩みには、選定のポイントを具体的に解説するページを作成。「社内でデザインの重要性を理解してもらえない」という課題には、経営層への提案方法をまとめたコンテンツを用意しました。
お客様の立場に立って、「こんな情報があったら助かる」と思えるコンテンツを一つひとつ作り上げていきました。

運用しやすい仕組みづくり
100ページ近いコンテンツを効率的に管理・更新するため、運用面でも工夫をしました。ほぼすべてのページをWordPressの投稿画面で編集できるよう設計し、デザイナーでなくても自由にコンテンツを追加できる仕組みを構築しています。
この仕組みがあったからこそ、膨大な原稿をそのまま流し込んだり修正したりが臨機応変にできました。新しいサービスの追加、事例の更新、お客様の新たな課題に対応するコンテンツ作成も、HTMLの知識がなくても簡単に行えます。
「作ってからがスタート」を実践するための、技術面での基盤です。


4.リニューアル後10ヶ月の成果
2024年10月のリニューアルから約10ヶ月。数字で見える明確な成果が現れています。
Google Analyticsで見る利用者行動の変化
アクセス数の大幅増加
- セッション数:118.8%増加(年間13万セッション)
- 表示回数:64.8%増加(年間20万回)
- セッションあたりページビュー:24.7%減少(1.6ページ)
セッションあたりのページビュー数が減少しているのは、一見すると悪い数字に見えるかもしれません。
しかし、これは情報設計の改善により、ユーザーが少ないクリックで目的の情報にたどり着けるようになったことを意味します。以前は「どこに欲しい情報があるのか分からず、あちこち探し回る」状態でしたが、リニューアル後は「必要な情報がすぐ見つかる」状態に改善されました。
Search Consoleで見る検索パフォーマンスの改善
検索結果での露出とクリック数
- 合計クリック数:2.52万件
- 合計表示回数:94.1万件
- 平均CTR:2.7%
- 平均掲載順位:40.9
16ヶ月間のグラフを見ると、2024年10月のリニューアルを境に、クリック数と表示回数が明らかに上昇しています。その後も継続的に成長しており、2025年に入ってからもさらなる向上が見られます。
お客様の検索意図に合ったコンテンツを作成し、適切なキーワードで最適化したことで、検索エンジンからの評価が向上した結果だと考えています。

問い合わせ数2.5倍増加とその質的向上
問い合わせ数と質の変化
- 問い合わせ数:2.5倍増加(月5〜8件 → 12〜15件)※営業メール除く
- 初回打ち合わせでの具体的相談率:大幅向上
- 受注率:向上傾向
最も重要な成果は、問い合わせ数の増加だけでなく、その質の向上です。
以前の問い合わせ例: 「ホームページを作りたいのですが、どのくらいの費用がかかりますか?」
現在の問い合わせ例: 「弊社は○○業界で、現在△△という課題を抱えています。御社のサイトで紹介されていた××のような解決アプローチを検討したく、詳しくお話を伺いたいです。」
この変化は、サイト上で課題解決のプロセスや考え方を詳しく説明したことで、お客様が「この会社なら自分たちの悩みを理解してくれそう」と期待を持って問い合わせてくださるようになったためです。
結果として、営業効率も改善しました。以前は初回打ち合わせでニーズの聞き取りから始める必要がありましたが、現在では最初から具体的な解決策の提案に入ることができています。
5.使い古された「作ってからがスタート」という言葉
継続的な改善への取り組み
今回のリニューアルで大きな成果を得ることができましたが、完璧とは思っていません。まだまだ改善の余地があると感じています。
現在も定期的にGoogle AnalyticsとSearch Consoleのデータを分析し、ユーザーの行動を観察しています。どのページで離脱が多いのか、どんなキーワードで流入が増えているのか、問い合わせに繋がりやすいコンテンツはどれなのか。
データから見えてくる課題に対して、毎月小さな改善を積み重ねています。
クライアントにお伝えしていることの実践
「作ってからがスタート」これは使い古された言葉ですが、私たちがクライアントによくお伝えする言葉です。サイトは公開した時点で完成ではなく、そこから継続的に改善していくことで真の価値が生まれます。
自分たちが実践せずにアドバイスするのは不自然です。だからこそ、私たちも自社サイトで実践し、継続的な改善に取り組んでいます。
この取り組みを通じて、クライアントにより具体的な提案ができるようになりました。「実際に弊社でも同じことを実践して、こんな成果が出ています」と事例をお見せできることで、提案の信頼性が上がったと感じています。
6.まとめ
今回の自社サイトリニューアルを通じて、改めて確信したことがあります。
見た目の美しさは大前提として、そこに戦略が加わることで初めて、ビジネスに寄与するサイトが生まれる。
徹底的な競合分析とキーワード調査、お客様の悩みに焦点を当てたコンテンツ設計、データに基づく継続的な改善。この3つを軸にしたリニューアルが、セッション数2倍、問い合わせ数2.5倍という成果に繋がりました。
冒頭でも書いた通り、制作会社が自社の成果を公開しないことに、私はずっと違和感を持っていました。数字を見ながら戦略を立て、成果を出すことが弊社の強みである以上、それを自ら証明しないのはおかしい。今回こうして数字を出すことで、その姿勢を示せたと思っています。
サイトリニューアルをご検討中の方には、ぜひ戦略的なアプローチを取り入れていただきたい。見た目を変えるだけでは得られない、本当の成果がそこにあります。よく見れば見るほど細かい仕掛けがされているので、ぜひ色々見てもらえると嬉しいです。