特定のフォントを使うためにきちんと説明できていますか?
デザインの現場では、プロジェクトごとに目的や雰囲気に合った欧文フォントを選ぶ必要があります。膨大なフォントの中から、一番最適なものを見つけ出すのは、経験を重ねたデザイナーでも悩むポイントではないでしょうか。
フォント選びでよくあるお悩み
- ブランドの世界観を表現できる、ふさわしい欧文フォントってなんだろう?
- 狙いたい印象を与えるために、どのフォントを使うべきだろう?
こんなお悩みを感じたことはありませんか??
そんな方にとっておきなのは、フォントの歴史的背景や特徴、与える印象を理解することです。見た目だけでなく、その背景にある歴史や特徴を理解することで生まれるメリットは沢山あるんです!
フォントの背景にある歴史や特徴を理解することで生まれるメリット
- デザインの意図を明確に説明できるようになる
- クライアントへのデザイン提案において、説得力が生まれる
- 似たようなフォント同士の比較・選択がスムーズになる
また、現代で使われている多くのフォントは、いくつかの「定番フォント」から枝分かれして発展してきた歴史があります。これらの定番フォントをしっかり理解することで、現代のさまざまなフォントが理解しやすくなるので、今回はデザインの幅を広げる定番欧文フォント19個を、具体的な活用シーンとともにご紹介させていただきたいと思います!
※この記事では、できる限り正確な情報を記載するよう努めていますが、もし誤りを見つけられた方は、お知らせいただけると嬉しいです….!
1 Times New Roman(タイムズ・ニュー・ローマン)
小さくても超見やすい!イギリスの名門紙The Timesのために作られたフォント
1932年、イギリスの格式高い新聞社「The Times」のために特別に作られたフォントです。「読みやすさ」「インクの節約」「限られた紙面での効率的な文字配置」という3つの課題を解決するために生まれました。当時の新聞フォントと比べて、文字の高さを高めに設定し、セリフ(文字の端にある装飾)を適度な大きさに抑えることで、小さな文字でも読みやすい新聞印刷に最適化された実用的なデザインとして設計されています。
「上質」「信頼性」「知的」「正統性」「説得力」という印象を与えられます!
高級ホテルやブランド、名門大学など、世界中の一流の組織で使われ続けてきたことから、「上質」「信頼性」「知的」「正統性」という印象を与えられるフォントになりました。イギリスの名門紙The Timesのために開発された背景から、文字の端にある繊細な装飾(セリフ)が品格ある雰囲気を出しています。格式と信頼感、そして上品さを兼ね備えたこのフォントは、知的で説得力のある印象も併せ持ち、Microsoftのデフォルトフォントとして採用されたことで、現代のビジネスシーンでも広く親しまれているフォントです。
フォント太さによる印象の違い
Bold(太字)
- 伝統的な権威と重厚感が強まります
- アカデミックな印象を保ちながら存在感があります
- 学術書の見出しや重要な引用文で効果的です
Light(細字)
- 新聞や雑誌のような上品で学術的な印象を与えます
- セリフの繊細さが際立ち、エレガントな雰囲気です
- 文学作品や論文の本文で効果的です
実際の使用例
2 Adobe Garamond(アドビ ギャラモン)
500年以上にわたり世界中の出版物で使用され続けてきたGaramond
そんな書体を元にデジタル化・再解釈したものがAdobe Garamondです。クラシカルな特徴を保ちながら、現代のデジタル環境での使用に適するよう最適化されています。
Garamondは16世紀、フランスの巨匠Claude Garamondが生み出しました。このフォントは、当時のヨーロッパで「最も美しい書体」として賞賛を集め、「読みやすさ」「優美なデザイン」「印刷時の実用性」という3つの魅力を追求して作られ、今でも多くのデザイナーから愛され続けています。丸みのある優しい文字の形と、繊細なセリフ(文字の端の装飾)が特徴です。小さなサイズでも読みやすく、長い文章を読んでも目が疲れにくいのが嬉しいポイント!上品で優雅な雰囲気を持つこの書体は、見出しから本文まで幅広く活用できます。さらに、印刷時のインク消費量が少ないというエコな一面も持ち合わせた、まさに魅力いっぱいのフォントです。
「教養」「伝統的」「高級感」「歴史」という印象を与えられるフォント!
Garamondがフランスのルネサンス期に生まれた背景から、文字の端にある繊細な装飾(セリフ)が古典的な優美さを演出しています。また、「教養」「伝統的」「高級感」「歴史」を表現したい場面で効果を発揮します。例えば、文学全集、美術書、クラシック音楽のプログラム、高級ワインのラベルなど、文化的な深みと歴史的な重みを伝えたい場面で使用されます。
フォント太さによる印象の違い
Bold(太字)
標準的なウェイトは一般的な本文用として使われますが、Bold(太字)は見出しやタイトルに使用した際、他のセリフ体と比べて穏やかな存在感を示すのが特徴です。Garamondが持つ独特の曲線美が、太字になっても損なわれにくい設計になっているためです。そのため、古典的な書籍デザインにおいて、本文と見出しの調和を重視する場合に特に重宝されています。
実際の使用例
3 Bodoni(ボドーニ)
数学的な正確さで設計された美しいフォント
18世紀末、イタリアの印刷職人Giambattista Bodoniが作り出したこのフォントは、当時の常識を覆す革新的なデザインでした。最大の特徴は、太い部分と細い部分の「メリハリ」の強さにあります。例えば、文字の縦線は太く力強く、横線は細く繊細に描かれています。この大胆な太さの違いは、当時進歩していた印刷技術があったからこそ実現できた新しい表現方法でした。また、Bodoniは数学的な正確さで設計された美しさも持ち合わせています。まっすぐな線を基調とした、現代的でスタイリッシュな印象を与えるフォントです。このような特徴から「モダンローマン体」と呼ばれ、現代のデザインでも人気があります。ただ、細い線が特徴的なため、小さな文字サイズで本文などに使うと読みづらくなってしまいます。
ファッション界で愛され続けてきたBodoni
「優雅さ」「ファッション」「モダン」を象徴するフォントとして認識されています。垂直性が強調された幾何学的なデザインと、極端な太さの対比が織りなす華やかさは、見る人に強い印象を残します。特に大きなサイズで使用した際に真価を発揮し、雑誌の見出しやポスター、ロゴなど、視覚的なインパクトが求められる場面で、その存在感を際立たせます。
実際の使用例
4 Didot(ディド)
フランスのファッション雑誌で多く使われ、「優雅さの象徴」として認識されたフォント
18世紀末、フランスの印刷家Firmin Didotによって作られたフォントです。Bodoniと同時期に開発され、極端な線の太さの対比と完璧な幾何学的構造が特徴で、よりフランス的な優雅さを持っています。フランス革命後のファッション雑誌で多用され、フランスでは「優雅さの象徴」として認識されています。高解像度での印刷に最適化された精密なデザインは、当時の印刷技術の革新を象徴しています。
洗練された優雅さと芸術的な気品を表現できるフォント
パリのオートクチュールのように、洗練された優雅さと芸術的な気品を表現できるフォントです。特に大きなサイズで使用した際、その繊細な造形美が際立ちます。フランスの高級ブランドで多用される背景から「パリジャンエレガンス」を演出する代表的な書体として、ファッション業界での信頼も厚く、特に見出しやロゴで効果的に使用されています。
実際の使用例
5 Baskerville(バスカヴィル)
Adobeフォントを確認する(印刷やスクリーン表示に適応させたBaskerville URW)
活字だけで印刷物を魅力的に見せられないか研究されたフォント
Baskervilleは1750年代、イギリスで活躍した印刷業者ジョン・バスカヴィルによって設計されました。当時、書物は『挿絵』によって出来を競い合っていたのですが、バスカヴィルは活字だけで変化がもたらせないか考えました。より滑らかな紙の開発、より黒い印刷のインク、印刷機にまで綿密な改善を加えたのち、Baskervilleを作成し注目を集めています。
Baskervilleの特徴は、縦線と横線のコントラストの強さにあり、真っ白な紙に黒々としたインクで書いたときに美しく見えるように計算されて作られたと言われています。現在でもイェール大学やプリンストン大学など、多くの名門大学の公式書体として採用されています。
「教養」「伝統」「格調」を表現したい場面で効果を発揮します!
例えば、文学作品の本文、学術書の装丁、高級ブランドのロゴ、法律事務所の印刷物など、知的な重みと歴史的な価値を伝えたい場面で重宝されます。また、伝統ある高級ブランドの印刷物では、洗練された曲線を持つセリフと鋭い仕上がりが、ブランドの歴史と品位を表現することができます。
ただ、カジュアルさやモダンさを前面に押し出したい場合や、デジタルでの表示をメインとする場合は、別の書体を検討した方がよいかもしれません。
フォント太さによる印象の違い
Bold(太字)
- イギリスらしい格調の高さと重厚感が強まります
- セリフの特徴が際立ち、古典的な存在感があります
実際の使用例
6 Trajan(トレイジャン)
皇帝の記念碑に刻まれた文字をもとに作られたTrajan
約2千年前のローマ帝国時代に建てられた石柱に刻まれていた美しい書体、それをデジタルフォントで再現した書体がトレイジャン(Trajan)です。このフォントは、古代ローマで領土を最も拡大させたトラヤヌスという皇帝の記念碑に刻まれた文字をもとに作られました。特徴は、すべて大文字で書かれていることと、文字の端に小さな飾り(セリフ)がついていることです。皇帝のための書体が起源のため、格式が高い企業のブランドロゴなどに使用されています。
また、400 を超える映画ポスターに Trajan が使用されているほど、映画ポスターの定番フォントともなっています!
※https://www.vox.com/2018/6/28/17514024/trajan-movie-posters
使う際の注意点!
- ひとつひとつの文字の大きさがバラバラ
- 大文字しかない
- 文字の縦横比が違う
このことから、可読性を考えると文章などでの使用はおすすめできません。
タイトルやロゴでの使用がおすすめ!格式の高さと歴史的な重みを表現できるTrajan
映画のタイトルや高級ホテルのロゴなど、格式の高さと歴史的な重みを表現したい場面で多用されています。特にハリウッド映画のタイトルでよく使用され、「壮大」で「格調高い」印象を与えるフォントとして定評があります。建築関連の書籍や展示会など、古典的な権威と永続性を表現したい場面でも効果的です。文字自体の完成度が高いため、タイトルやロゴで使用すると、TRAJANの強みが存分に発揮されるのでおすすめです!
フォント太さによる印象の違い
Bold(太字)
- 帝政ローマの威厳と存在感が強まります
- 石に刻まれたような力強さが際立ちます
- 映画のタイトルや記念品の刻印で効果的です
Light(細字)
- ローマ帝国の石碑を思わせる気品ある印象を与えます
- 古代ローマの彫刻的な繊細さが際立ちます
- 映画のクレジットや格式高い招待状で効果的です
実際の使用例
7 Big Caslon(ビックキャスロン)
「迷ったときはカスロンを使え」と言われるほど愛されているCaslon
Big Caslonは、1700年代のイギリスの活字職人ウィリアム・カスロンが作った「Caslon」という書体を見出し用に生まれ変わらせたフォントです。フォントの特徴は、大きなサイズで使うことを考えて作られたことです。例えば、本の見出しやポスターなどで使うと、文字の端につく飾り(セリフ)や太さの違いが、とてもきれいに見えるように工夫されています。カスロンという書体は、英語圏のデザイナーの間で「迷ったときはカスロンを使おう」と言われるほど、とても信頼されている定番フォントです。特に何か特別なイメージを出したいわけでもないとき、多くのデザイナーが第一候補として選ぶほど、スタンダードな書体として親しまれています。ただ、BigCaslonは「見せる」ための書体として評価が高い分、実用的な読み物には向いていないので注意が必要です!
「伝統的なイギリスらしさ」と「現代的な解釈」が融合したフォント
「伝統的なイギリスらしさ」と「現代的な解釈」が融合したフォントとして、特に出版やブランディングの分野で重用されています。クラシカルな雰囲気を保ちながら、現代的な視認性と存在感を備えており、特に見出しやロゴ、サイン等の大きなサイズでの使用時に本来の魅力を発揮します。高級感と伝統を表現したい場面で効果的です。
実際の使用例
8 Rockwell(ロックウェル)
目立つため、記憶に残らせるために作られたフォント
1934年、Monotype社によって開発された代表的なスラブセリフ体です。可読性を高める目的で文字全体、文字の端の装飾(セリフ)を太く四角くしているのが特徴で、この大胆な特徴により、強い印象と高い視認性を実現しています。産業革命後のアメリカで人気を博した「広告用書体」の性質を受け継ぎ、力強さと親しみやすさを併せ持っています。
堅苦しさを感じさせない「フレンドリーな信頼感」を与えます!
目立つように作られている、太く安定感のあるデザインは、縦線と横線の太さがほぼ同様で、注目を集めやすく、また記憶に残りやすい特徴があります。セリフも目立つように大きめのデザインのため、ポップな印象を持っています。「元気」「活発」「子供向け」「親しみやすさ」「アメリカ的」などの子供向けの出版物やエンターテインメント関連の媒体でも多用され、堅苦しさを感じさせない「フレンドリーな信頼感」を表現できます。
実際の使用例
9 Optima(オプティマ)
墓石の文字からインスピレーションを得て作ったOptima
1950年代にドイツの文字デザイナー、ヘルマン・ツァップによって作られたフォントです。縦線と横線の太さのコントラストや、セリフを示唆するようなエレメントが残っているため、サンセリフ体なのにセリフ体のようなエレガントさがあるのが、Optimaの特徴です。この特徴は、古代ローマの墓碑文字からヒントを得ており、縦の線は太く、横の線は細く作られているため、機械的な印象を避けながらも、現代的でエレガントな雰囲気を醸し出しています。
現代的でスタイリッシュ、高級感があるのに親しみやすい
シンプルでありながら上品な印象があるため、化粧品のパッケージや高級ブランドのロゴなどでもよく使われています。古典的な造形の美しさを取り入れ、文字の下の部分が優雅に広がるデザインになっている、この繊細な形が、女性らしさや上品さを感じさせるため、女性向けのファッションブランドのロゴなどでよく使われています。このフォントの魅力は、相反する要素を一つの文字に組み込んでいることです。例えば、人の手で書いたような温かみがありながら、現代的でスタイリッシュ。高級感があるのに親しみやすい、という絶妙なバランスとなっています。文字の端に飾り(セリフと呼ばれる装飾)がないシンプルな書体なのに、なぜか温かい印象を与えられるんです。そんな特徴を活かして、このフォントは化粧品のパッケージや、病院・クリニックの看板など、「高級感」と「親しみやすさ」の両方が必要な場面で特によく使われています。
TrajanとOptimaの比較
碑文をベースにしている2つの書体の比較
・Trajan:より高級でかっちりした印象で、古典的な威厳と装飾性を重視した特別な場面向けのフォント
・Optima:曲線的な優美さがあることから、特に女性向けのデザインと相性が◎ 小文字あり
実際の使用例
10 Helvetica(ヘルベチカ)
特徴がないことが特徴のHelveticaは超万能!
Helveticaは1957年、スイスのデザイナー、マックス・ミーディンガーによって「誰にでも読みやすく、どこでも使える」という理念のもと作られ、現在、世界で最も使用されているフォントの一つと言われています。当時、欧米では産業の発展に伴い、国際的に通用する明快な情報伝達が求められており、その要求に応えるフォントとして誕生しました。AppleやAmerican Airlines、JR東日本など、誰もが知る大企業のロゴに採用されているのは、この「普遍的な読みやすさ」が理由です。特にiPhoneのシステムフォントとしても採用され、私たちの生活に最も身近な書体の一つとなっています。装飾を極限まで排除したデザインで、特徴がないことが特徴の書体となります。
「信頼できる企業」という印象を与えるフォント
どんな場面でも違和感なく使えて、誰が見てもクリアな印象を与えられるHelveticaですが、
「専門性」「信頼感」「清潔感」を伝えたい場面で特に効果的です。装飾を排除したシンプルなデザインは、企業の公式文書やブランディング、医療機関の案内など、プロフェッショナルな印象を重視する場面で力を発揮します。1960年代にアメリカの企業ロゴで多用されて以来、「信頼できる企業」という印象を与えるフォントとして定着しています。
また、異なる言語や文化圏の人々にも明確にメッセージを伝えたい場合にも適していて、BMWやPanasonicなどのグローバル企業のロゴや、空港・地下鉄の案内表示に採用されました。ファッションブランドのタグやメニュー表など、スタイリッシュさと読みやすさの両立が求められる場面でも効果的です。
フォント太さによる印象の違い
Bold(太字)
- 力強さと存在感を感じさせます
- 注目を集めたい見出しや警告文などで効果的です
- 例えば、広告のキャッチコピーや、重要な案内の見出しに適しています
Light(細字)
- エレガントで洗練された印象を与えます
- 見出しやタイトルで使うと、モダンでスタイリッシュな雰囲気に
- 例えば、高級ブランドのロゴや、ファッション雑誌の見出しなどで効果的です
実際の使用例
11 Futura(フーツラ)
Adobeフォントを確認する(現代的にアレンジされたFuturaPT)
「数学的な美しさ」と「人間の目でも自然に見える」の2軸を叶えた書体
Futuraは1927年、ドイツの印刷工であり教師でもあったパウル・レナーによって設計されました。なんと100年前に作られたフォントです!
数学的な美しさを大切にしながら、人間の目にも自然に見えるようバランスを整えられています。例えば「O」の文字。完璧な円にしてしまうと、少し違和感が出るので少しだけ調整を加えた形になっています。Futuraは大きく使うとカッコよく決まるし、小さな文字でも読みやすいのも特徴です。
今でも特に、テクノロジー系の企業やモダンなファッションブランドに人気です。装飾を抑えたクリーンな印象と、幾何学的なフォルムが作る普遍的な美しさが、現代的なデザインにぴったりフィットします。またNASAで採用されたように「未来」を体現するフォントとしても注目を集めています。ルイ・ヴィトンのような高級感から、ドミノピザのようにポップなものまで、組み方次第で色々な表現ができるのも魅力の一つです。
現代的でクリーンな印象を保ちながら、どこか人間的な温かみも感じさせるFutura
Futuraは、「洗練された美意識」「デザイン性」「独自性」「高級感」という印象を与えたい時に効果的です。テクノロジー企業のブランディングでは、幾何学的な形状が持つクリーンさと先進性が、製品やサービスの革新性を視覚的に表現しています。建築や工業製品のデザイン関連でも効果的です。フォントの持つ構造的な美しさが、製品の機能性や信頼性を暗示的に伝えることができます。サイズを問わず高い視認性を持つため、ロゴやヘッドラインから本文まで幅広く使えるのも特徴です。特に、現代的でクリーンな印象を保ちながら、どこか人間的な温かみも感じさせたい場合に、Futuraは理想的な選択となります。
フォント太さによる印象の違い
Bold(太字)
- 幾何学的な直線や円が際立ち、未来的な印象を与えます
- モダンアートのような洗練された雰囲気を演出できます
- ファッションブランドのロゴや、アート系の見出しで効果的です
Light(細字)
- 力強く大胆な表現が可能です
- ポスターの見出しや、インパクトが必要な場面で効果的です
実際の使用例
12 Gotham(ゴッサム)
アメリカの街角から生まれた書体
Gothamは2000年、ニューヨークの街角に残る1930年代の古い看板文字からインスピレーションを受け、タイポグラファーのトビアス・フレア=ジョーンズによって設計されました。ニューヨークのポートオーソリティバスターミナルの看板文字が直接的なモデルとなり、「アメリカの街角から生まれた書体」として知られています。
また、オバマ大統領の2008年選挙キャンペーンで使用されたことで一躍脚光を浴び、「希望」と「変革」を象徴するフォントとして歴史に刻まれました。World Trade Centerの礎石にも採用され、現代アメリカを代表するフォントとしての地位を確立しています。
洗練された男性的な印象、信頼性という印象を与えるGotham
「誠実さ」「力強さ」「現代性」を表現したい場面で効果を発揮します。例えば、建築プロジェクトのプレゼンテーション、企業の年次報告書、都市開発の広報資料など、信頼性と先進性の両方が求められる場面で重宝されます。特にGQやDiscovery Channelなどのメディアでも採用され、洗練された男性的な印象を与えたい場合にも適しています。
実際の使用例
13 Din(ディン)
Adobeフォントを確認する(※現代的にリデザインされたDIN 2014)
ドイツの工業用フォントとして生まれたDIN
1936年、ドイツの技術図面や道路標識のために作られ、工業用フォントとして生まれたDIN。当初は純粋に機能性を追求して設計された書体でした。ドイツでは身の回りの多くのものに使われていて、高速道路などの道路標識やマンホールなどに使用されています。また、「文字の太さが均一で、曲線部分も直線的なパーツ」で構成されていることが特徴となります。アルファベットの大文字と小文字の高さの比率が近く、全体的にコンパクトなのも特徴的です。
「高い視認性」「普遍性」「専門性」を持つフォント
テクニカルで先進的な印象を与えたい時に効果的です。自動車メーカーのBMWやテクノロジー関連の広告、ファッションブランドなど、工業的な精密さとモダンさを表現したい場面で多用されています。道路標識やナンバープレートなどの公共サインでも広く使われ、高い視認性と普遍性を持つフォントとして定評があります。建築や工業デザイン関連の資料、展示会の案内板など、専門性の高い情報を伝える場面でも、その本来の機能性が活きていきます。
フォント太さによる印象の違い
Light(細字)
- 工業的な精密さと技術的な印象を与えます
- 近未来的なクリーンさが際立ちます
- テクノロジー関連の見出しや技術文書で効果的です
実際の使用例
14 Frutiger(フルティガー)
遠くからでも、様々な角度からでも、みやすいFrutiger
1976年、パリ・シャルル・ド・ゴール空港の案内看板用にエイドリアン・フルティガーによって設計されました。空港という特殊な環境で、遠くからでも、様々な角度からでも、そして移動中でも瞬時に読み取れる文字となっています。悪条件下でも優れた視認性を発揮するため、ロンドンの地下鉄やスイス政府の公式書体としても採用。「見やすさの王様」と呼ばれています。
正確な情報伝達が重要な場面で使用したいフォント!
明快さと親しみやすさのバランスが取れた印象を与えたい時に最適です。医療機関のサイン、交通標識、製品の取扱説明書など、正確な情報伝達が重要な場面で多く使用されています。また、スイス国鉄やロンドンのヒースロー空港など、世界中の公共施設でも採用され、国際的な信頼を得ています。文字の形状が開放的で温かみがあるため、公共性の高い情報を柔らかく伝えることができ、特に医療や教育関連の分野で重宝されています。
Frutigerから派生したNeue Frutiger®
Frutigerのオリジナルフォントをベースにデザインの見直しを行ったフォントですが、機能性・可読性に優れ汎用性が高く看板やディスプレイに適した書体も様々な場所で使われています!
15 Univers(ユニバース)
徹底的な可読性へのこだわり、中立的で普遍的なデザインを追求したUnivers
1957年、スイスのエイドリアン・フルティガーによって設計されたUniversは、体系的に設計された画期的なフォントとして誕生しました。当時としては革新的な、21種類のウェイトとスタイルを持つフォントです。それぞれに明確な番号が振られていたことで、デザイナーが意図する表現を正確に選べるようになりました。フルティガーは「文字は透明なワイングラスのように、中身の邪魔をしてはならない」という考えのもと、極めて中立的で普遍的なデザインを追求しました。特筆すべきは、その徹底的な可読性へのこだわりです。文字のプロポーションや太さの変化が科学的に計算され、どのような環境でも読みやすい文字を実現しています。また、各ウェイト間の統一感は、情報の階層構造を明確に表現することを可能にしています。
グラフや図表、技術文書、会社案内など、正確な情報伝達が求めらる時に使いたい!
客観性と普遍性を重視する場面で真価を発揮するフォントです。パリ・シャルル・ド・ゴール空港のサイン計画でも採用されているように、国際的な場面での情報伝達に適しています。グラフや図表、技術文書、会社案内など、正確な情報伝達が求められる場面で効果的です。豊富なウェイトバリエーションを活かして、文字の大小や太さの対比による情報の整理が可能で、複雑な情報構造も明快に表現できます。
実際の使用例
16 Gill Sans(ギルサン)
手書き文字の自然な見た目と幾何学的な美しさが兼ねそわったGill Sans
1928年、イギリスの彫刻家で書体デザイナーのエリック・ギルによって設計されたGill Sansは、人間味あふれる優雅さを持つサンセリフ体として知られています。翌年にはロンドンの鉄道(LNER)の公式書体に採用されるなど、またたく間にさまざまな分野で活用されるようになりました。線幅に手書きのような抑揚が見られ、幾何学的な美しさも兼ね備えた独特の魅力を持っています。
イギリスを代表する書体として、BBCやペンギン・ブックスなど、多くの著名な組織で長年使用されてきました。特に印象的なのは、大文字と小文字のバランスが絶妙で、伝統的な品格と現代的な読みやすさを両立している点です。文字の太さの変化が自然で、人間の手で書いたような温かみのある印象を与えます。
上品さと親しみやすさを同時に表現したい時に最適!
上品さと親しみやすさを同時に表現したい時に最適なフォントです。英国らしい伝統と品格を感じさせながら、堅苦しさを感じさせない特徴を持っています。出版物のデザイン、企業のブランディング、文化施設のサインなど、洗練された印象を大切にしたい場面で効果的です。特に教育関連の資料や芸術関連の印刷物では、その文化的な雰囲気が活きてきます。また、読みやすさと優雅さを備えているため、長文の本文組みから見出しまで、幅広い用途で使用できるフォントとして支持されています。
フォント太さによる印象の違い
Bold(太字)
- 堂々とした存在感とクラシカルな印象が強まります
- イギリスらしい伝統的な雰囲気を感じさせます
- タイトルや重要な見出しに効果的です
Light(細字)
- イギリスらしい品の良さが際立ちます
- 優雅でヒューマニスティックな印象を与えます
- 文化的な印刷物や見出しで効果的です
実際の使用例
17 Franklin Gothic(フランクリンゴシック)
アメリカで増加する新聞広告の需要に応えるために作られた、目立つことが目的のFranklin Gothic
Franklin Gothicは目立つことが目的の書体です。19世紀末のアメリカで増加する新聞広告の需要に応えるため、力強く、紙面で目立つデザインとして開発されました。第二次世界大戦中のプロパガンダポスターでも多用され、「アメリカの報道を支えたフォント」として歴史に名を残しています。
印刷技術が発達し、新聞やポスターでの大きな見出しが必要とされる時代に生まれたこのフォントは、遠くからでも読みやすく、インパクトのある表現を可能にしました。特徴的な太い線と、適度な丸みを帯びた文字の形状は、現代でも力強いメッセージを伝えたい場面で重宝されています。Franklin Gothic は行そのものを重視します。スリムですっきりとしたデザインで、書体の美的価値を維持しながら、スペースを節約できます。
メッセージを強く伝えたい場面に効果的!
「力強さ」と「信頼感」を伝えたい時に効果的なフォントです。広告の見出し、ポスター、企業ロゴなど、目を引く必要がある場面で真価を発揮します。映画のポスター、アルバムのジャケットデザイン、スポーツイベントのロゴ、政治キャンペーンの広告など、メッセージを強く伝えたい場面でも頻繁に使用され、力強い注目を集めるのに最適です。異なる太さのバリエーションも豊富で、見出しから本文まで、一貫したデザインで情報を整理することもできます。
実際の使用例
18 Avenir(アベニール)
未来志向×人間味のある温かみを持つフォント
1988年、スイスのタイプデザイナー、エイドリアン・フルティガーによって設計されました。「Avenir」はフランス語で「未来」を意味し、未来志向のデザインながら人間味のある温かみを持つフォントとして知られています。直線で構成された幾何学的形状を基本としながらも、正円に近い曲線を取り入れることで、硬すぎない印象を与えるフォントです。
Futura(フーツラ)からインスピレーションを得ながらも、より現代的で実用的なデザインに仕上げられました。特に小さなサイズでの可読性を重視して設計され、画面表示でも印刷でも優れた視認性を発揮しています。Futuraと比べると、「a」「t」に違いが大きく出るようです。
フランスの国民にとって馴染みやすい、スマートな印象と親しみやすさを演出できるAvenir
新しい印象と親しみやすさの両方を出したい時に、とても便利なフォントです。iPhoneやMacでおなじみのAppleも長年このフォントを使っているように、スマートな印象と親しみやすさを同時に演出できます。ウェブサイトやスマートフォンアプリ、会社のパンフレット、雑誌など、様々な場所で使えます。また、太さの種類も豊富なのでフォーマルな場面でもカジュアルな場面でも使うことができます。日本語の角ゴシックと組み合わせても違和感がなく、とても相性が良いフォントです。
19 Akzidenz-Grotesk(アクチデンツ・グロテスク)
実用性重視で作られた、フォント界の大先輩
1896年、ドイツで商業、科学、貿易用に作成され、使用されたフォントです。「Akzidenz(アクチデンツ)」はドイツ語で「商業印刷物」を意味し、その名の通り実用性を重視して設計されました。その洗練された形はHelvetiaを含む多くの現代フォントのもとになった書体で、Helveticaの代わりにAkzidenz Groteskを使うことが多いようです。スイス航空やドイツ連邦鉄道で使われてきたあと、「モダンデザインの原点」となっています。
情報整理したい時におすすめ!信頼感のある印象を与えられるフォント
Akzidenz Groteskは、文字の大きさが小さくても読みやすく、情報を整理して見せたい時にぴったりのフォントです。例えば、美術館で作品の説明を書くときや、道路標識のデザインなど、身の回りのいろいろな場所で使われています。ウェブサイトのメニューや商品カタログにも、このフォントはよく登場しています!
また、しっかりとした信頼感のある印象を与えられるのも、このフォントの魅力の一つです。会社のロゴや企画書、プレゼン資料などに使うと、洗練された雰囲気を演出できます。
実際の使用例
まとめ
以上、定番の欧文フォント19選を歴史、特徴、実用性という3つの視点から紹介させていただきました!お楽しみいただけたでしょうか?
実務では、これらの視点を総合的に検討することで、プロジェクトに最適なフォント選択が可能になっていくかと思います。ただ、ここでご紹介したフォントの特徴や使用例は、あくまでも一般的な指針です。実際のデザインでは、クライアントの要望や、業界の慣習、ターゲット層など、様々な要素を考慮する必要があります。大切なのは、これらの定番フォントの特徴を理解した上で、各プロジェクトの目的に応じて柔軟に選択・活用できる判断力を養うことです。
歴史ある定番フォントを知り、その特徴を理解することは、より豊かな表現力につながっていくのでこの記事を通して皆さんのフォント選びの参考になり、デザインの可能性を広げるきっかけとなれば幸いです!