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デザインセンスの育て方。デザインを見る目(審美眼)を鍛える7つの実践的方法。

デザインセンスの育て方。デザインを見る目(審美眼)を鍛える7つの実践的方法。
クオートワークスのブログ

東京のWeb制作会社 株式会社クオートワークスのブログです。ここではWeb制作におけるノウハウやナレッジ、ビジネスに関する覚書などまとめて発信しております。

「良いデザイン」とは何か、それをどう評価すべきか。「自分には見る目がない」「センスがない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

しかし、デザインセンスは生まれつきのものではありません。そして多くのデザインに触れるだけでは不十分で、「考えながら見る」という訓練が必要なのです。デザインの見方にはコツがあり、それを意識的に実践することで、誰でもデザインセンスを磨くことができます。

この記事は、主に次のような方々に向けて書かれています

  1. デザインの発注や修正依頼を担当している方
  2. 見る目を磨いて、自分のデザインスキルを向上させたい中級者、初学者の方

記事を読む価値

  • デザインの良し悪しを判断する基準が明確になり、的確なフィードバックができるようになります。結果として、より質の高い成果物が得られます。
  • デザインを評価する基本的な視点を理解することで、自社の製品やサービスの改善点が見えてきます。
  • 自分のデザインを客観的に評価する力が身につき、クオリティの向上につながります。

1. 好きなところではなく、もっとこうしたら良くなるのでは?と考える癖をつける

デザインセンスを磨く第一歩は、普段から目にするすべてのデザインに対して「スタイリングの粗を探す」という視点を持つことです。単に「好き」「嫌い」「わかりやすい」「分かりにくい」と感想を思い浮かべるだけではなく、「どうすればもっと良くなるか」を考える習慣をつけることが重要です。

なぜ改善点を探すのか

良い点を見つけるよりも、改善点を探す方が難しいため、より高い訓練効果が得られます。多くの人は好きなところを見つけるだけで満足してしまいがちですが、それでは表面的な感想に留まってしまいます。改善が必要な点とその理由を考えることで、より深い洞察が得られます。

実際に、自社のデザインの改善プロセスをSNSで公開している企業もあります。例えば、デザイン会社M-HANDでは「チェックバック」という視点で、デザインの改善点を具体的に共有しています。
参考)チェックバックの視点 https://www.m-hand.co.jp/blog/design/11811/

さらに、改善点を考えることには別の効果もあります。そのデザインを「自分事」として捉えられるようになるのです。単なる受け手の視点から、作り手の視点へと切り替わることで、デザインの本質や意図への理解が自然と深まっていきます。こうした姿勢を続けることが、確かなデザインセンスを育てることにつながるのです。

具体的な実践方法

例えば、よく使うアプリのインターフェースを見るとき、次のような点に注目してみましょう

  • 色使いは目に優しいか
  • ボタンの配置は使いやすいか
  • 情報の優先順位は適切か
  • 自分だったら「どう改善したいか」
  • 実際に使用してみて、どのような体験だったか
  • 先輩デザイナーや上司はどんなフィードバックを出しそうか
  • 今風のデザインになっているか、古く感じないか

批評的視点と建設的姿勢のバランス

批評的な目を持つことと否定的になることは別物です。建設的な視点を持ち、どうすれば改善できるかを前向きに考えることが大切です。世の中には質の高くないデザインも多いため、発売されたものや公開されたものをすべて優れていると思わないことが重要です。自分で考え、自分の意見を持つことがとても大切です。

良いインプットの重要性

この視点の難しいところは、良いものを多く知らないと「もっと良くするには?」の観点が生まれにくい点です。普段からたくさん良いインプットがあると、改善点は多く見出せるようになります。質の高いデザインに触れる機会を意識的に増やし、デザインの良し悪しを判断する基準を自分の中に育てていくことが効果的です。

上記のピンタレストのように、ただ漠然と見るだけでなく、パーツごとや主題ごとに分類してストックしておくと、学習効率が上がります。細部まで注目して分類することで、デザインの本質をより深く理解することができます。細部まで注目していないと「普通どうなっている(例えばメガメニューやスマホのアンカーリンクなど)」という記憶の呼び起こしが上手にできません。

2. 制作技術難易度を考える

デザインを評価する際、単に「良い・悪い」を判断するだけでなく、「制作の難易度」という視点も重要です。つまり、そのデザインを自分で作ろうとしたら、どの部分が最も難しいかを考えてみることが有益です。

技術的難易度の認識

例えば、シンプルなロゴと、複雑なグラデーションや細かいイラスト、3Dを駆使したロゴを比較してみましょう。後者の方が明らかに技術的なハードルが高いことがわかります。このように、デザインには技術的な難易度があり、作る時に技術レベルが低いと、自分の表現の幅も制限されてしまう傾向があります。

技術的難易度と良いデザインの関係

ただし、ここで注意すべき重要な点があります。技術的に難しいデザインが、必ずしも良いデザインとは限りません。デザインの面白いところは、状況や対象によっては、シンプルな方が効果的な場合もあるということです。クリエイターは技術的に凝ったものを好む傾向がありますが、ユーザーにとってはそれほど重要ではないこともあります。つまり、「良いもの」と「制作が難しいもの」は同じではないということを覚えておく必要があります。

音楽との類比、、漫画との対比、ゲームとの類比

音楽で例えると分かりやすいかもしれません。高度な演奏技術を持つミュージシャンと、シンプルな演奏のミュージシャンを比較すると、前者の方が圧倒的に技術が必要です。しかし、どちらが優れているとは一概に言えません。演奏技術の高さと音楽の良さは必ずしも一致しないのです。

漫画でも同じことが言えます。緻密な絵を描くことができる作家と、シンプルなタッチの作家がいます。しかし、絵の上手さと漫画の面白さは別物です。時には、ラフなタッチの漫画の方が読者の心に深く響くことがあります。

ゲームについても同様です。美しいグラフィックは確かに魅力的ですが、それだけが良いゲームの条件ではありません。シンプルな見た目でも、ゲームプレイが面白ければ多くのプレイヤーを魅了することができます。
つまり、「良いもの」と「制作が難しいもの」は同じではないということを覚えておく必要があります。技術は確かに非常に重要な部分ですが、それ以上に大切なのは、コンテンツが持つ本質的な魅力なのです。

例)デスノートと比べ、寄生獣の絵は決して上手とは言えませんが、どちらも名作には変わりありません。逆に絵の上手くなさは味があると言ったりもします。

なぜ技術的難易度を考えるのか

技術的難易度を考える理由は主に二つあります

1.アイデアの幅を広げる

「技術的に何でもできる」という前提でアイデアを考えた方が、より良いアイデアが生まれる可能性が高くなります。自分のできる範囲だけでアイデアを考えると、どうしても発想が限定的になってしまいがちです。

2.スキル向上の指針

技術的な難易度は比較的鍛えやすいものです。漠然と「デザインが上手くなりたい」と思っても難しいですが、「どんなデザインでも再現できる力」は、比較的訓練しやすいのです。トレースの練習などはその好例です。

技術的難易度を意識することのメリット

  • より幅広い視点でデザインを考えられるようになります。
  • 自分の技術をどう磨けばいいかが明確になります。
  • 技術と効果の関係を理解し、状況に応じた最適なデザインを選択できるようになります。
  • 本質的な価値にフォーカスした見る目が鍛えられます。

こういった視点を持つことで、デザインに対する感性や思考の深さが鍛えられていきます。デザインを見て、技術的な難易度を考えることは、デザインの世界をより深く理解し、自分の創造性を広げるための重要な視点となるでしょう。

3. デザインの目的とターゲットを推察する

デザインは常に特定の対象に向けて、明確な目的のために作られています。そのため、ターゲット以外の人が見ると、その良さが分からない場合があります。デザインを評価する際は、「誰に向けて」「何を伝えたいのか」を常に意識することが重要です。

デザインの意図を踏まえて解釈する

重要なのは、そのデザインがユーザーにどのような行動を促そうとしているかを考えることです。時には、行動を促すことに重点を置いたデザインは、必ずしも「美しい」や「好まれる」デザインではない場合があります。つまり「あなたが好きなデザイン」が、そのデザインでは有効に機能しない事を制作者は既に検討、想定の上、「あなたが好きではない表現」になっている可能性があるのです。

具体例:経口補水液オーエスワン(OS-1)のパッケージの例

例えば、経口補水液OS-1のパッケージデザインを考えてみましょう。このデザインは、シンプルで医療的な印象を与えるため、クリエイターやデザイナーの目には特に魅力的とは映らないかもしれません。しかし、脱水症状や体調管理に気を遣う方々の目にはどう映るでしょうか。

  • OS-1という名前を聞いたことがある。スポーツドリンクのようには見えないな。
  • 医療機関で使われているということは、安心して飲める。
  • ナトリウムやブドウ糖などの電解質バランスが整えられているという新しい情報を得られる。

このような情報が、実際の購入行動につながる可能性が高いのです。この行動を促すために、クライアントやデザイナーは装飾的なデザインよりも、医療用補水液としての信頼性や機能性の情報伝達を優先していると考えられます。
実際、OS-1は2010年にグッドデザイン賞を受賞していますが、それは視覚的な美しさだけでなく、必要な情報を明確に伝え、使用者の安心感につながるデザインであることが評価されたためです。

自分の主観を信じすぎない

このように、デザインを評価する際は「誰に向けて」「何を伝えたいのか」を常に意識することが大切です。「自分の感性を信じる」という事は何かを創造するとき大事なことでもありますが、目を鍛えるという訓練では自分自身の好みや美的感覚だけで良し悪しを判断するのは適切ではありません。

デザインの真の価値は、その目的をどれだけ効果的に達成できているかにあります。時には、個人的な好みと相反するデザインでも、ターゲットとする層には非常に効果的である場合があります。

実践のためのヒント

  • 様々なデザインを見るときに「このデザインは誰向けか」「何を伝えたいのか」を常に考えてみましょう。
  • 自分とは異なる年齢層や属性の人々がどのようにデザインを受け取るか、想像力を働かせてみるのも有効です。
  • 効果的だと感じたデザインについて、なぜそう感じたのか、目的とターゲットの観点から分析してみましょう。

この視点を持つことで、デザインをより客観的に評価し、その真の効果を理解することができます。また、自分自身がデザインを制作する際にも、「誰に」「何を」伝えたいのかを常に意識することで、より効果的なデザインを生み出すことができると思っています。

4. 評判の高いデザインの特徴を考察、「文脈の理解は価値を理解すること」を知る。

すでに高い評価を得ているデザインについて、なぜユーザーに支持されているのか、仮説を立てて考察することは、視点を広げる上で非常に有効な訓練になります。

評価の高いデザインへの疑問

例えば、Tokyo TDC 2024のグランプリ作品を見て、「良いとは思うけど、これの何が最も優れているのだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。アート性の高いデザインや、思考量が多く詰まったデザインは、一見しただけでは全ての理解が難しいことが多いのです。

※東京タイプディレクターズクラブ(東京TDC)は、文字と言葉の視覚表現の追求を目的に1987年に設立、以来、コンペティション

デザイン、エンターテイメント、アートの関連性

デザインをより深く理解するために、エンターテイメントやアートとの関連性を考えてみることが重要です。デザイン、エンターテイメント、アートはそれぞれが重なるグレーゾーンを持ち、グラデーションのように連続性があります。これらの分野は創造的表現という点で共通しており、互いに影響を与え合っています。

知識の重要性

特にアートは、それを理解するための知識がなければ十分に楽しむことができません。そのため、アートの属性を含む、エンターテイメントやデザインは、鑑賞者の知識レベルに応じて、大きく楽しめるか楽しめないか、大きく心を打つかが変わってきます。

例えば、バレエの場合、その優雅な動きの背後にある技術的な難しさや、物語性、音楽との調和などを理解していないと、単なる「きれいな踊り」としか感じられないかもしれません。同様に、抽象画や現代アート、そして洗練されたデザインを初めて目にしたとき、「何がすごいのかわからない」と感じる人は少なくありません。

文脈の理解

しかし、これらの作品が生まれた背景や作者の意図、当時の社会状況などを知ると、突如として「なるほど!」と理解が深まることがあります。デザインも同様で、文脈を理解することで、その価値が明確になることが多いのです。

多角的分析の方法

そのため、玄人評価の高いデザインを見たときは、単純に自分感覚だけで「好き・嫌い」で判断するのではなく、以下のような視点で分析してみることが重要です:

  • なぜこのデザインが高く評価されているのか
  • どのような新しい表現技法や技術が使われているか
  • このデザインが生まれた背景や社会的文脈は何か
  • ターゲットユーザーにどのような影響を与えているか
  • 従来のデザインとどこが異なるのか
  • アートやエンターテイメントの要素がどのようにクロスオーバーしているデザインか

このように多角的に分析することで、デザインを見る目が徐々に養われていきます。

主観だけでは凄いものは目の前を通り過ぎる

自分の知識レベルで、主観だけで好きか嫌いかで判断すると、「凄いもの」は自分の目の前を通り過ぎてしまいます。つまり自分に見る目がなくて素通りしてしまうのです。凄いとされているものには理由が必ずあります。人気があるものも同様に理由があります。その価値を自分が感じられないときは、自分自身の感覚を疑ってみることも大切です。

実践のためのヒント

  • 評価の高いデザインを見たら、その理由を考えてメモを取ってみましょう。
  • デザイン関連の書籍や記事を読み、デザインの歴史や理論についての知識を深めましょう。
  • 美術館やデザイン展に足を運び、直接作品に触れる機会を作りましょう。
  • デザイナーやアーティストのインタビューを読んだり聞いたりして、創作の背景を理解しましょう。

5.視座を変える。自分以外が見た場合の想像力を高める。

デザインを評価する際は、多角的な視点で仮説を立てることが重要です。一般ユーザーの目線で使いやすさや魅力を考えるだけでなく、ユニバーサルデザインの観点から誰もが使いやすいかどうかを検討しましょう。同時に、同業者の視点で業界標準を踏まえつつ、どのような独自性があるかを分析することも有効です。

また、クライアントの立場に立って依頼者の要望がどのように反映されているかを考察したり、制作者の観点から与えられた条件の中でどのような創意工夫がなされているかを想像したりすることで、デザインの奥深さや、デザイナーが直面した課題が見えてきます。

例えば、ある商品パッケージを見たとき、一般消費者としてパッケージの魅力や商品特徴の分かりやすさを評価し、高齢者の立場に立って文字の読みやすさや開封のしやすさを考えます。環境保護の観点からは、過剰包装やリサイクル可能な素材の使用を検討します。さらに、マーケティング担当者の目線で、競合商品との差別化やブランドの一貫性を分析します。

このように多角的に見ることで、デザインの複雑さや、デザイナーが直面した様々な課題が浮き彫りになってきます。

視線を変える観点例

デザインを多角的に見る際に特に重要な観点として、以下のようなものが挙げられます

お母さんの観点(お母さんUX)

これはお母さんでも使えるか?を考えます。お母さんという身近で、操作が上手でない人間を引き合いに出すことで正確な予測が立てられるという手法です。
参考)「お母さんも使える」サービスはどう生まれているのか? BASEのデザイン思想
https://devblog.thebase.in/entry/2018/07/11/110000

ユニバーサルデザインの観点

高齢者、障害を持つ人、子供など、様々な人々にとっての使いやすさを考慮します。

同業者の観点、想定されるターゲットの観点

業界標準やトレンドとの比較、ターゲット層のニーズや好みとの適合性を検討します。

これを作って欲しいと依頼した人の観点

クライアントの要望や期待にどれだけ応えているか想像します。

オーダーからそれを作った製作者の観点

与えられた条件や制約の中で、どのような創意工夫がなされているかを想像します。

これらの観点を意識的に取り入れることで、デザインをより深く、多面的に理解することができます。例えば、ウェブサイトのデザインを評価する際、「お母さんUX」の観点からは情報の見つけやすさや操作の簡便さを、ユニバーサルデザインの観点からは色のコントラストや文字サイズの適切さを、同業者の観点からは最新のデザイントレンドの取り入れ方を、それぞれ考察することができます。

6.クレジット(制作過程)に興味を持つ

デザインの背景や制作過程(クレジット)を知ろうとすることも重要です。同業のプロとしては、製作者の他の作品を見ることは当然のことであり、これはデザインの世界でも同様です。 例えば、料理人が美味しい料理を食べたとき、使用されている調味料、食材を知ろうとするのと同じです。ファッションデザイナーやスタイリストが素材に注目するのと同様に、デザインの世界でも背景を知ることは不可欠です。

気に入ったグラフィックデザインを見つけたら、そのデザイナーの他の作品も調べてみましょう。そうすることで、そのデザイナーの特徴的な作風や得意分野が見えてくるかもしれません。さらに、そのデザインが生まれた時代背景や、使用されているフォントの歴史なども調査すると、新たな発見があるかもしれません。

このように、デザインを多角的に分析し、その背景まで深く掘り下げることで、デザインに対する理解が深まり、自身のデザインスキルの向上にもつながります。また、これらの視点は、デザインを依頼する立場の人にとっても、より良い成果物を得るための重要な指針となるでしょう。

7.日常生活の中でデザイン観察力を磨く

デザインは私たちの日常生活のあらゆる場所に存在しています。朝起きて手に取るスマホの画面から、通勤・通学途中で目にする看板や広告まで、すべてがデザインの対象なのです。クールでオシャレなものだけが優れたデザインではありません。その「条件下で最良の形になっている凄いもの」は結構世の中には多いと思っています。

街を歩くとき、看板やポスターのレイアウトや色使いに注目してみましょう。ファストフード店と高級レストランの看板を比較すると、それぞれのブランドイメージをどのように表現しているか、興味深い発見があるでしょう。 お店の外観デザインがターゲット層にマッチしているか考えるのも面白い視点です。若者向けのカフェと、シニア向けの和食店では、色使い、照明、家具のスタイルなど、細かい部分にも違いがあることに気づくでしょう。

買い物をする際は、パッケージデザインの機能性をチェックしてみましょう。環境に配慮したブランドのパッケージが、その価値観をどのように表現しているかを観察するのも興味深いでしょう。 SNSを見るときも、人気の投稿のビジュアル面での特徴を分析したり、広告デザインがどのようにユーザーの注目を集めているか考えたりするのも良い練習になります。

家でくつろぐときも、使っている家電や家具のデザインの良さを再発見したり、テレビCMのビジュアル表現とメッセージの一貫性を観察したりしてみましょう。

このように、日常生活のあらゆる場面でデザインを意識的に観察することで、少しずつですが確実にデザインを見る目が養われていきます。「デザイン日記」をつけて気づいたことを記録したり、友達や家族とデザインについて話し合ったりするのも凄く効果的です。

まとめ:デザインセンスを磨き、審美眼を鍛える7つの実践的方法

デザインセンスを磨くための7つの方法は、単なるテクニックの集合ではありません。それぞれが有機的につながり、段階的に深い理解へと導いてくれる道筋となります。

基礎となる2つの視点

1. 改善点を探す視点を持つ

「好き」「嫌い」という感想から一歩踏み出し、「もっとこうしたら良くなるのでは?」と考える習慣をつけること。これは全ての基礎となる最も重要な姿勢です。作り手の視点に近づくことで、デザインへの理解は格段に深まります。

2. 制作技術の難易度を知る

表現の可能性と限界を理解することは、デザインを見る目を養う上で欠かせません。ただし、これは技術的な難しさを追求することが目的ではありません。むしろ、シンプルな表現が効果的な場合もあることを知ることで、状況に応じた適切な判断ができるようになります。そして私たちクリエイターは「技術難易度が高い=良い」という誤った判断をしがちです。

視野を広げる3つの実践

3. 目的とターゲットを考える

デザインは必ず「誰かに向けて」「何かを伝えるため」に作られています。その視点を常に意識することで、自分の好みや価値観を超えた客観的な評価ができるようになります。

4. 評価の高いデザインを分析する

業界人から高い評価を得ているもの、また大衆に支持されているものには、必ず理由があります。その背景にある意図や時代性を理解することは、デザインの文脈的な価値を見出す力を養います。同時に、自分が良いと思っていなくとも「なぜ良いとされているのか」「なぜ人気か」を考えることで、自身の価値観も広がっていきます。

5. 多様な立場からの視点を持つ

一般ユーザー、専門家、クライアント、それぞれの立場で見ることで、デザインの持つ多面的な価値が見えてきます。この視点の切り替えは、より包括的なデザイン理解への扉を開きます。

理解を深める統合的な2つの実践

6. 制作背景への理解を深める

クレジットや制作過程を知ることは、単なる興味本位ではありません。そこには必ず制作者の意図や、乗り越えるべき制約との格闘の痕跡があります。それを理解することは、デザインの本質的な価値を見抜く力となります。

7. 日常的な観察眼を養う

これまでの全ての視点を統合し、日常のあらゆる場面でデザインを観察する習慣を身につけること。これは最終的な目標であると同時に、新たな気づきの出発点でもあります。

これら7つの方法は、互いに関連し、補完し合っています。基礎となる視点があってこそ視野が広がり、その視野の広がりが更なる理解へとつながっていきます。デザインセンスを磨くことに終わりはありませんが、この7つの視点を意識することで、より確かな成長を実感できるはずです。

あとがき:デザインセンスを磨くことの本質。私見として。

デザインの世界には、様々な形の「強さ」が存在します。アインシュタインの言葉を借りれば、「誰もが天才だ。しかし、魚の能力を木登りで測ったら、魚は一生、自分はだめだと信じて生きることになるだろう」というのは、まさにこのことを指しているのではないでしょうか。

魚のような作品や仕事を木登りで測ってしまうと、私たちは凄いものを見過ごしてしまう可能性があります。それは視野の狭さがもたらす悲劇とも言えます。だからこそ、自分の視野や物差しを疑い続けることが、デザインセンスを磨く上で重要なのだと考えています。

「見る目がある人」とは、こうした多様な強さを見出せる人のことを指すのだと思います。それは、自在に視座を変えながら、それぞれの作品や仕事が持つ独自の価値を発見できる能力のことです。 そして、その先にある「作り手として力がある人」になるためには、二つの要素が必要だと思っています。一つは、異なる視座から見出した様々な強さを組み合わせられるアイデア創出力。もう一つは、それを実際のものとして実現できる高いオペレーション技術です。この二つを兼ね備えることが、クリエイターとしての理想の姿なのではないでしょうか。

ここで興味深いのは、センスを高めるためには、むしろ固執やこだわりから解放される必要があるという点です。一般的に、クリエイターには強いこだわりが必要だと考えられがちです。しかし、皮肉なことに、それは必ずしも正しくないかもしれません。確かに、物事をやり遂げるためのこだわりは大切です。しかし、自分の価値観に固執するこだわりは、むしろ成長の妨げとなる可能性があるのです。 デザインの世界で本当の意味で強くなるためには、自分の物差しを疑い、視野を広げ続ける勇気が必要なのかもしれません。それこそが、デザインセンスを磨く本質なのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

ムラマツヒデキ
ムラマツヒデキ

director

とにかく元気な東京目黒のデザインファームQUOITWORKS Inc.のデザイナー社長。MUUUUU.ORG運営。Awwwards2022-23審査員。ムーテレという名のYouTuber。守備領域プロデュース、ディレクション、デザイン。@muuuuu_tv 愛犬家。最近は専らblender

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