デザインってどう教えるの?元・任天堂デザイナー前田さんから学ぶ効果的なフィードバックとは

デザインをする上で避けては通れないのが制作物へのフィードバック。自身が受ける以外にも同僚や部下のデザインに対して言う側に回る事も多く発生するかと思います。

そこで痛感するが教える事の難しさ。的確なアドバイスをしたつもりが、意図しない仕上がりや進展がないといった事が起こる場合もあり、下手したら自分がデザインするよりも難しいのでは?と感じているのは私だけではないはず。

そんな時に出会ったのが著者、前田高志さんの「鬼フィードバック」という本。デザインの完成に至るまで前田さんとデザイナー達によるフィードバックのやり取りを見ていく内容になっておりますが、前田さんの発言や切り返し方に着目して見ると、教える側の注意点や効果的なプロセスなどのヒントを多く知ることができました。

そこで今回は私なりに気づいた点をまとめてみました。受ける側の目線や全体を通したやり取りが気になった方はぜひ書籍も見てみてください。

目次

  1. フィードバックにおける基本プロセス
  2. 答えを言うのではなく「なぜ」で問いかける
  3. 具体的な事を言うタイミングとは?
  4. 過程や挑戦はしっかりと褒める
  5. デザイナー目線で見ない

フィードバックにおける基本プロセス

本書では大きく2つのフェーズに分けてフィードバックをしていると建築に例えて書かれております。

  • 1.土台の構築(目的や方向性の検討)
  • 2.建物の構築(ディテールや具体的な手法の追求)

後でも触れますが1では敢えて具体的なフィードバックはせず、デザイナー本人の目論見や方向性を徹底的に問いかけるスタイルで進めます。そこを固めた上で具体的な指示や細部の追求は2で進めていく形となります。

目的や方向性からというのは王道なプロセスにも見えますが、デザインだとこれが出来ていない場合も多いと感じました。1を飛ばしてつい2からしてしまいがち。これはデザインを見せられると見た目の印象や細部の作り込みに目がつきやすく、先にディテールの指摘してしまうためですね。ここは意識しないと抜けてしまう箇所だなと感じました。

答えを言うのではなく「なぜ」で問いかける

フィードバックでやってしまいがちの一つに具体的な手法や考えを提示し過ぎてしまう事があると思います。

一見すると具体的な事を言った方が最短距離にも思えますが、明確な正解がないデザインでは、作り手の方向性や考えを狭めてしまうため逆効果になる場合もあります。

本書では本人の意思を尊重させ、意図があるなら出したフィードバックに逆らっても良いとも書かれており、フィードバックとは答えを教える作業ではない事が示唆されております。

本書のやり取りでも前田さんは中盤までのフィードバックに対して必ず「問い」で締めくくるようにして、作り手側に考えさせる余白を残しております。

※本書より発言を抜粋

いいね!初心者向けっぽさはあるけど、もっとものづくりが好きな人に訴求したほうがよくない?

それと感覚的なすごみはあるけど、万人に刺さるわけではないので絶対的なものが欲しい。例えば、もし自分の母親に見せた時に、どんな反応をすると思う?

これだけいろいろ出てきたのなら、そこからわかったこともあるんじゃないかな?何をやるか、何をしないのか、それを書き出してみて。

具体的な事を言うタイミングとは?

一方で具体的な手法や指示をする場面もいくつか登場しています。問うだけでなく状況も見て柔軟にフィードバックの粒度を変化させています。本書では下記のケースで具体的な指示をする場面がみられました。

  • デザイン方向性が決まり調整する段階
  • デザインが煮詰まって、相手がいっぱいいっぱいになっている状況
  • 経験が浅い人へのテクニック的なレクチャー

また相手の経験によって、最初の導入も変化させています。本書を例に挙げると経験が浅い方に対してはまず軸がブレないように、目的を聞くようにして方向性の擦り合わせから丁重に行っています。

※本書より発言を抜粋

いま、前田デザイン室として何が一番大事かな

あーなるほど。では始めていきますか。これは誰向けの動画?

一方で経験のある方に対しては、序盤から少しハードルの高いフィードバックも入れるなど相手のスキルを加味した上で内容も変化させています。

※本書より発言を抜粋

あと、お堅い系の仕事とか。おもしろいことが通じないシーンもあるから今回の目的とはちょっと違うかな。「シーンの想像の解像度」を上げましょう。

本の表紙を見てじゃなくて、POPを見てから手に取らざる得ないと思えるもの。レイアウトじゃなくて「企て」が欲しいな!

過程や挑戦はしっかりと褒める

デザインフィードバックの難しい所はどうしても指摘をするような形になるため、受けている側は批判をされているように感じてしまうところだと思います。デール・カーネギーも人を動かす三原則の一つに「相手を批判しない」と挙げているほどコミュニケーションでは極力避けたい行為ではあります。

相手にそのつもりはないとはいえ、作った物にダメ出しされるのは自身を否定されるようで辛いですよね。とはいえしっかり指摘はしてあげないと前には進めません。前田さんの場合はデザイン自体には厳しいフィードバックを出しつつもそれにトライした事や挑戦した過程についてはしっかり褒めて、指摘一辺倒にならないようにバランスをとられています。

※本書より発言を抜粋

あきらめず、模索、すばらしい!お疲れ様。フィードバックしていきます。

案の出し方がめちゃくちゃおもしろい!今の状況で「勝てるデザイン」のプロモーションに何が最適か整理してみて。

アイディアはおもしろいし、印象に残すことは大事な要素だけど、それが強過ぎるというか、それ自体が目的になっていないかな?

本書でも「鬼フィードバック」は「膨大なラリーを繰り返す」事であり「きつい言葉を投げかける」という意味ではない事を強調されています。

デザイナー目線で見ない

本書では繰り返し使用されている印象的な言葉もいくつかありました。共通しているのはデザイナー以外の視点で見ても伝わる物になっているかという事。教える側はデザイナー目線だけではなく、それ以外の第三者視点でも見ることが大事だと感じました。

最悪のお客さんを考える
自分自身がお客さんになったとイメージしてツッコミを入れていく作業。デザイナー以外の客観的な視点を入れて、デザイナーのエゴや愛着で分かりにくくなっていないかを振り返る。

・メジャー感
多くの人に受け入れられている「王道」的なデザインの事。安心や信頼感をイメージさせる事ができる。まずは王道を理解した上で個性を付加する。その方が幅広く応用力のあるデザインをする事ができる。

まとめ

本書を読んで感じたのはフィードバックとは一方的な物ではなく、互いのコミュニケーションからより良い物を作り上げていく事。そのためには教える側の言い方やプロセスも流動的に変えていくことが重要だと感じました。特に忙しい時はフィードバックが単調になる場合もあり、本書を読む事で様々な反省や気づきがありました。

この記事を読むことで、フィードバックの仕方について少しでも参考になれば幸いです。

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